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「存続を脅かす問題(existential challenge) 」とは、欧州の競争力に関する2024年のドラギ報告書が、欧州の競争力について述べた際に使われた表現であり、欧州の経済成長を改善するための構造的な施策の必要性を示しています。この施策には、地域のGDPの約5%に相当する投資が必要とされています。ポール・フランソワ・プルーヴォスト氏とカレン・アズーレイ氏は、この投資促進における民間資本、ならびにプライベートアセットの役割を強調しています。
プライベートアセットは、イノベーションを推進し、欧州チャンピオン企業を創出し、必要な多額の投資資金を結集することで、欧州大陸の国際競争力の再構築を支援する独特な位置づけにあります。欧州は、プライベートアセット投資にとって最も魅力的な投資先の1つとして台頭しつつあると考えています。
ドラギ報告書の発表の後、(ある意味では皮肉なことに)トランプ政権の動きも、ヨーロッパに自律性と競争力を強化する更なる緊急性と動機をもたらしました。
欧州への投資の根拠には、欧州企業と比較対象となる米国上場企業との間にある市場評価のギャップや、資金調達コストの低下が含まれます。しかしながら、主な投資の根拠は、経済改革と長期投資に適した安定した環境が組み合わさることで、欧州全域にわたって投資家にとって大きな機会が開かれるという確信が高まっている点にあります。
ドラギ報告書では、現在から2030年までに年間約8,000億ユーロ(約136兆円)の追加投資が必要であると指摘しています。ドイツを除けば財政的な余地はほとんどなく、このギャップを公的資金で埋めるのは困難です。また、欧州はすでに銀行システムを通じた融資に大きく依存しており、たとえ資本市場がより統合されたとしても、必要な金額を引き出すのは難しいでしょう。
歴史的に大規模な公共投資計画、産業政策の構造変化、地政学的な再編が組み合わさって、戦略的に重要なセクターに資本が投入される例が数多く生み出されています。これらには、エネルギー、AI、防衛、航空宇宙、インフラストラクチャーの分野が含まれます。
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